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シュウマイ・ほうき鶏レポ

 シュウマイ・ほうき鶏レポ

レポート:斉藤愛・澁谷碧・畑瀬愛海・吉田文香

2025年10月22日、「戸田シュウマイ」のシェフである戸田康利さんが立命館テロワールにお越しくださり、料理を振舞ってくださった。我々4名の学生も調理に加わり、共同してシュウマイを手作りした。本レポートでは、シェフが調理時におっしゃられていたことをまとめている。

1.“音”で切る

 調理は、食材をみじん切りにするところから始まった。
 戸田シェフは先に調理を進めており、その手さばきに驚愕した。包丁のスピードがとても速く、目で追いつけないほどだった。さらに、顔を上げて調理人の方々に指示をしており、食材を目で確認しながら切っていないことに驚いた。シェフの調理姿を見たことがなかったため、我々は興味津々で観察していた。
 実際に、我々も玉ねぎと干しホタテを水で戻したものをみじん切りに挑戦した。しかし切り方が分からず、戸田シェフにコツを尋ねた。戸田シェフは「音で切るんだよ」とおっしゃられていた。補助してくださった調理人の方は、包丁を軽快に叩いて「このリズムで切るんだよ」とおっしゃられていた。調理の達人らは、食材を”音“で切るのである。
 戸田シェフや調理人の方々が食材を切っているところを観察すると、軽快な音で一定のリズムで切っていた。まるで音楽を奏でるように正確で、常に一定の音だった。その姿を真似て実際にみじん切りに挑戦したが、リズムはおろか、包丁の持ち方すら拙かった。達人の調理の感覚は、一朝一夕で真似て得られるものではないのである。
 また、達人は感覚だけでなく物理学も考えて調理されていた。みじん切りにした食材をさらに細かくするために、食材と包丁の持ち方を変えて切っていた。そのとき、戸田シェフにコツを尋ねたところ「なるべく包丁の先端を掌で抑えて、てこの原理を使って切る」とおっしゃられていた。教わった通りに包丁を使ってみると、切りやすく、リズミカルに食材を細かく切ることができた。そこで初めて、”音”で切ることの意味を掴めた気がした。しかし、達人らの調理の技術はすぐに得られるものではなく、長年の経験と努力によって身につくのである。

戸田シェフのみじん切りの様子
 



学生らの調理の様子


2.混ぜる

 本工程では、シュウマイの食感や風味を左右する「具材の混ぜ合わせ」を行った。今回は豚と牛の2種類のシュウマイを作ったため、豚挽肉と牛挽肉を別のボウルに用意し、塩胡椒、砂糖、オイスターソース、パン粉などの調味料を加えて混ぜ合わせた。調味料が全体に均一に行き渡るよう、手のひら全体を使ってしっかりと練り混ぜることを意識した。この際、十分に粘り気が出るまで混ぜることが重要である。粘り気が出ることで、具材同士がしっかりと結着し、崩れにくくなることに加え、肉汁が閉じ込められてジューシーでふっくらと仕上がる為だ。
 次に、みじん切りにした玉ねぎとホタテを加えて全体を軽く混ぜ合わせた。ここで注意すべき点は、混ぜすぎないことである。玉ねぎを過度に混ぜると水分が過剰に出てしまい、具がべちゃついた食感になるおそれがある。そのため、肉だね全体に具材が均等に分散する程度にとどめ、粘りを保ちながらも玉ねぎのシャキッとした食感を損なわないように意識した。以上の工程を経て、肉の旨味と野菜の食感のバランスが取れたシュウマイのタネが完成した。
 ただ混ぜるだけでなく、混ぜる順番や混ぜ方にコツがあって、一つ一つの工程に美味しくするためのポイントが詰まっているのだと実感した。


調味料と挽肉


玉ねぎとホタテを加えて混ぜる様子
    

3.シュウマイを包む

 タネができたら、いよいよシュウマイを包む作業だ。戸田シェフの伝授のもと、シュウマイ作りが初めてだった我々はシュウマイの成形に挑んだ。シュウマイの皮を手のひらに置き、スプーンでタネをすくって50gになるよう乗せる。それから、程よい力加減で皮を回転させながら包んでいき、最後に上からスプーンでぎゅっと押さえて形を整える。はじめに一度戸田シェフに包み方を実演していただくと、あっという間に手の中でシュウマイが完成してしまいとても驚いた。その後、自分でも真似してみるのだが、全くうまくいかない。記念すべき最初の一個は、上から力強く押さえすぎて不格好に潰れ気味となってしまった。しかし、回数を重ねるごとにだんだんと力加減が分かってきて、数個目を作るころには形が崩れることなく、重心の安定したシュウマイを生み出すことができるようになっていった。包み終えたシュウマイをせいろに並べた時には、得も言われぬ達成感があった。
 シュウマイを綺麗に包むコツは、縦長にすること、肉をなるべく皮の真ん中に置いてしっかりと全て包むこと、スプーンの丸い部分を使って成形することであった。これらを実演しながら教えていただいたのだが、一つ一つの動きがとても素早くて無駄がなく、完全に理解するのに時間を要した。戸田シェフにとって、数字やマニュアルではなく、一つ一つの工程において適切な力加減や分量、テクニックが感覚的に肌に染みついていることが分かった。初めてシュウマイを包んでから、短時間で少し上達することができたが、プロはもっと経験を重ねることで肌感覚で素早く作れるようになるのだろうと、その職人技の凄さを感じた。


シュウマイを包んでいる様子
 


せいろや大皿に並べたシュウマイ
 

4.蒸す

 蒸す工程では、成形したシュウマイを適切な温度と時間で加熱し、肉の旨味を閉じ込めながらふっくらとした仕上がりにするために努めた。まず、鍋に水を入れ、沸騰させる。蒸気がしっかりと上がる状態を確認したうえで、蒸籠(せいろ)の底にクッキングシートを敷き、シュウマイを間隔をあけて並べた。このとき、間隔を詰めすぎると蒸気の通りが悪くなり、均一に火が入らなくなるため、シュウマイ同士がくっつかないように配置することが重要である。
 その後、鍋の上に蒸籠をセットし、約15分間蒸した。蒸している間は火加減を一定に保ち、蒸気が途切れないように注意した。時間が経過したら蓋を外し、全体に火が通り、表面に透明感が出ていることを確認した。蒸し上がったシュウマイは、肉汁をしっかりと含みつつ、皮や具がべたつかずにふっくらと仕上がった。味わいはほんのりと甘く、全体的にやさしい印象であった。また、他のグループやシェフの方々にも美味しく召し上がっていただけたようで、大きな達成感を得ることができた。


蒸し上がったシュウマイ

5.ほうき鶏

 今回の実習では、「ほうき鶏」を用いた調理を行った。私たちはソースの調理を担当し、皮ごと切ったレモンをミキサーで粉砕し、カンタン酢と白だしで味を整えた。レモンを皮ごと使用したため、やや苦味が感じられたが、白だしのうま味が強く感じられ、全体として深みのある味わいに仕上がった。
 使用した「ほうき鶏」は、鳥取県の伯耆(ほうき)地方で育てられるブランド鶏であり、その地名に由来して名づけられている。一般的な若鶏が約50日で出荷されるのに対し、ほうき鶏はおよそ80日という長い期間をかけてじっくりと育てられる。そのため、肉質にはほどよい弾力があり、噛むほどに深い旨みが感じられるのが特徴である。実際に試食した際も、一般的な鶏肉よりもしっかりとした食感と豊かな風味が感じられた。
 調べたところ、市場に出回っている鶏肉の90パーセント以上が若鶏であることがわかった。これは、鶏を大きくするためには多くの餌が必要であり、出荷までの飼育期間が長くなるほどコストがかかってしまうためである。そのため、ほうき鶏のように時間と手間をかけて育てられる鶏は限られており、希少価値の高い存在であるといえる。
 また、鶏肉の加熱は低温調理で行われたが、この工程は担当の方が実施されたため、学生は実際の調理操作を行っていない。それでも、低温調理によって肉の水分が保たれ、しっとりと柔らかい食感に仕上がっていたことが確認できた。低温調理は鶏肉のうま味を逃がさず、ブランド鶏の特長を最大限に引き出す調理法であると感じた。