引用・転載について
無断転載はおやめください。転載許可は、問い合わせフォームでお申し込みください。
論文等の学術上の目的での引用の際は、引用元として、著者名やタイトルやURL、あるいは上記のオリジナルデータの出典を記して、適切な方法で引用していただくようお願いいたします。(この場合は、転載許可の手続きは不要です。)
引用文献
タイトル:多様な飲食店についての感性タグシステムの開発発表者:和田有史 1,2),門上武司 2,3),高岡哲郎 2,4),渡邊淳司 5),山寺純 6), 高橋裕行 1),久住嘉和 5),村山卓弥 5)
1)立命館大学,2)全日本・食学会,3)株式会社ジオード,4)株式会社人形町今半,5)日本電信電話株式会社,6)株式会社 Eyes, Japan
日本官能評価学会2021年大会発表要旨集, 30 (2021)
感性タグとは
動画
趣旨・システム説明:和田有史(立命館大学, 全日本・食学会)
趣旨説明①:門上武司氏(全日本・食学会,ジオード)
趣旨説明②:高岡哲郎氏(全日本・食学会,人形町今半)
開発にあたって:山寺純氏(Eyes, JAPAN)
記事
*このシステムの開発は全日本・食学会,立命館大学,NTTの共同研究として、株式会社 Eyes, Japanの協力をいただいて行いました。
システム概要・操作方法
システムの概要
本システムは,我が国が誇る食文化を支える料理店での感動体験に関連する形容詞やオノマトペを検索キーワードとして構築されたアーカイブです。感性タグを用いることで,以下のことが可能となります。
・体験・創作したい感動から飲食店を見つける
・料理を味わいつくした人物の感動を追体験する
・料理や店での体験を創作したり・楽しむためのヒントを得る
開発目的
食品は我々の五感に様々な変化をもたらします。これまで食品の評価手法は数多く開発されてきました。例えば従来、食品会社などで品質管理などで用いられている官能評価は非常に優れた手法です。農研機構は食品のテクスチャについての評価用語を体系的に整理し,公開しています。こうした評価技法は食品の客観的な評価を目的としてきたため、情動的な評価は排除してきました。消費者の嗜好を調査する場合でも、画一的な評価指標を用いています。
しかし,多種多様な料理店での食事は,店や食器などのしつらえや関わる人々の所作なども含み,食品を超えた体験です。食の感動は食品とそれを取り巻く環境や文脈,料理人などのお店に関わる方々,さらには食材に関わる方々,味わう人々の間に生じるのでしょう。これらの料理店での体験の評価や測定を行うことは容易ではありません。たとえば,料理に着目してそれを計測機器を用いて測定しようとすると,視聴覚情報および温度情報,食感(テクスチャー)に限定されてしまいます。味嗅覚もある程度は測定できますが人間の体験そのものを現すような計測は困難です。そのように考えると,文化としての食の感動の評価手法は確立できていないのが現状です。
その一方で,インターネットが一般に普及して25年以上たった現在は,SNSなどに多くの食に関わる画像やテキストデータが存在しています。さらにその一部には,料理人にも信頼される食文化の有識者がブログなどに貴重な食文化の体験が蓄積されています。私たちはこのような記述が食文化に含まれる感動を整理するために有用であると考えました。そこで,食文化の有識者が保有するデータ(後述)を整理し,その記述に用いられた形容詞・オノマトペを抽出しました。これら形容詞・オノマトペを,感動体験を表現する感性タグとし,この感性タグを用いてキーワード検索ができるようにデータベース化しました。
料理店の評価データ
食文化の有識者である門上武司氏(一般社団法人全日本・食学会副理事長,株式会社ジオード代表取締役)が公開している「門上武司のおいしいコラム」のデータを,本人の承諾を得て用いました。このデータは,門上氏が2005年8月から記事形式で定期的に記録したものであり,2021年6月までに3,155報の記事があります。各記事は料理店での1回の食事内容の記述であり,食事で供された料理ごとに料理名,写真,評価が掲載されています。
操作方法
ここではシステムを利用するにあたって,以下の順で説明していきます。
◇ 画面の構成
◇ 選択肢について
◇ 具体的事例(1/2)
◇ 画面の構成
本システムは3種類のパートに分かれています。これらは,①表示情報選択部分,②抽出条件選択部分,および,③結果表示部分です。
①表示情報選択部分
画面の左側に位置します。以下の5種類が表示されており,初期は「Keywords Summary」が選択されています。ここで選択される内容により,③結果表示部分に表示される内容が異なります。
Keywords Summary:
指定された情報をもとに抽出された情報が一覧表示されます。表示される情報は,該当記事(特定の料理店における特定の料理)の情報です。また,キーワードとして指定した感性タグの内訳なども表示されます。
Keywords Cloud:
指定された情報をもとに抽出された感性タグのワードクラウドが表示されます。
Keywords Map (By Prefecture):
指定された情報の位置情報が地図形式で表示されます。抽出基準となるのは都道府県(国含む)の情報です。
Keywords Map (All Cities):
指定された情報の位置情報が地図形式で表示されます。抽出基準となるのは市町村の情報です。
Full Text Search:
テキスト検索機能の結果が一覧表示されます。表示される情報は,該当記事(特定の料理店における特定の料理)の情報です。
②抽出条件選択部分
画面の中央上部に位置します。以下の11種類が存在しますが,「Full Text Search」以外では10種類,「Full Text Search」では9種類が選択可能です。
ID:
コラム(記事)に振られたIDを選択します。
コラムカテゴリー:
記事が属するカテゴリーを選択します。
期間:
記事を作成するにあたって著者が飲食した日付を選択します。
節気:
記事を作成するにあたって著者が飲食した節気を選択します。
都道府県:
レストラン(料理店)の所在する都道府県(国名含む)を選択します。
市町村:
料理店の所在する市町村を選択します。
レストラン名:
料理店の名称を選択します。
レストランタイプ:
料理店のタイプを選択します。
(選択肢の例:イタリアンやフレンチなど)
キーワード:(Full Text Search時は利用不可)
感性タグを選択します。
キーワードタイプ:(Full Text Search時は利用不可)
感性タグの種類(形容詞,もしくは,オノマトペ)を選択します。
検索:(Full Text Search時のみ利用可能)
検索したいテキストを入力します。
◇ 選択肢について
絞り込みに用いる選択肢は右図のように選択することで,選択肢が現れます。このとき,チェックをつけた選択肢が選択された状態となります。デフォルトではすべての選択肢にチェックがついている状態です。すべてのチェックを一括してつけたり,外したりするには,上部のチェックボックス(赤丸で囲った部分)を操作してください。
なお,選択肢が1つも選択されない状態は認められません。選択肢が1つも選択されていない状態で確定された場合,自動的にすべてが選択された状態に更新されます。
◇ 具体的事例(1)
「感情体験から飲食店を見つける」として使用例を見ていきましょう。
① Keywords Summaryを選択します。
画面の右から「Keywords Summary」を選択します。
あるいは,起動時にはこれが選択されている状態ですので,文字の背景が薄い青色になっていることを確認してください。
② 感情タグを選択します。
今回は,「しっかり」と「しゃきしゃき」を選択するとします。まず,画面中央上部の抽出条件選択部分にある「キーワード」を選び,すべてのチェックを外しましょう。
その上で,改めて「しっかり」を選択します。「キーワード」の右にある数字(赤丸で囲った部分)が選択されているキーワード数です。「しっかり」だけを選択している状態なので「1」となっています。
次に「しゃきしゃき」をキーワードに加えましょう。右のスクロールを移動させながら探してもよいのですが,大変なので直接入力します。青線の部分をクリックしてください。すると文字が入力可能になります。
ここで「しゃきしゃき」と入力してください。該当する感情タグがあればチェックボックス(赤丸で囲った部分)と同時に表示されます。これにチェックを入れてください。選択されたキーワード数も「2」になりました。
結果表示部分には以下のように表示されたでしょう。
結果表示部分の左側には選択されたキーワードと,それぞれの記事の件数が表示されます。この例では「しっかり」は1,092件,「しゃきしゃき」は39件あることがわかります。
③ 並べ替えましょう。
結果表示部分の右側には記事の一覧が表示されています。また,一番右の列(「キーワード数」)には,いくつのキーワードが該当するかが示されています。
「しっかり」と「しゃきしゃき」を同時に満たしているものはどんなものでしょうか?キーワードの部分(赤線)をクリックしてください。1回クリックすると該当するキーワード数が多い順に表示されます(もう1回クリックすると少ない順に表示されます)。
これで,「しっかり」と「しゃきしゃき」の感情体験が報告されている料理店の情報(記事)が見つかりました。一覧表にある記事のURLをクリックすると該当記事を読むことができます。
◇ 具体的事例(2)
「料理や店での体験を創作するヒントを得る」ため,「Keyword Cloud」機能を使ってみましょう。ここでは,「天ぷら」を提供する料理店でできる体験が,地域(祇園と西天満)でどのように異なるのかを見てみます。
① Keywords Cloudを選択します。
画面の右から「Keywords Cloud」を選択します。選択されると,文字の背景が薄い青色になります。
② 絞り込み条件を選択します。
天ぷらを提供する料理店を指定するため,レストランタイプを指定します。まず,画面中央上部の抽出条件選択部分にある「レストランタイプ」を選び,すべてのチェックを外しましょう。
次にレストランタイプを指定します。青線の部分をクリックし,「天ぷら」と入力しましょう。そして,現れた「天ぷら」の横のチェックボックスにチェックをつけてください。
同様に「市町村」を選択してください。祇園だけを選択した状態と,西天満だけを選択した状態で結果表示部分に表示される内容に違いはあるでしょうか?
Keyword Cloudでは,出現頻度が高い感情タグが大きく表示されます。これにより,どのような感情体験が強く体験できるのかが視覚的にわかりやすくなっています。天ぷらを提供する料理店でも,地域によって感情体験が異なることがわかりますね。
「祇園」の「天ぷら」料理店についてのKeyword Cloud
「西天満」の「天ぷら」料理店についてのKeyword Cloud